劣化の進行を目視できなくなる
ボードの裏側に隠れると、錆汁、ひび割れ、浮き、剥離範囲の変化を日常的に確認できません。異常が表面化するまで発見が遅れる可能性があります。
CONSTRUCTION CASE / YOYOGI
中性化によって鉄筋を守るアルカリ性が低下し、鉄筋腐食と爆裂が発生。内装ボードで隠れる前に劣化部と錆を処理し、健全な断面と強度の回復を目的に施工しました。
壁全体・損傷部の接写・大きさが分かる写真があると、状況確認がスムーズです。
現場では、コンクリート打設時に生じたと考えられるジャンカと、中性化による鉄筋の錆・爆裂を確認しました。内装ボードで見えなくなる壁だからこそ、仕上げを急がず、脆弱部と鉄筋の状態を確認してから補修範囲を決めました。
粗骨材が露出し、コンクリートが密実になっていない部分です。打設時の材料分離や締固め不足などで発生し、健全部より内部へ二酸化炭素などが入りやすくなることがあります。
中性化が鉄筋位置まで進むと、鉄筋を守っていた環境が失われます。水分と酸素がある状態で錆が進み、膨張する力で周囲のコンクリートが押し出され、ひび割れ・浮き・剥落につながります。
コンクリートは本来、強いアルカリ性によって内部の鉄筋を錆から守っています。空気中の二酸化炭素が内部へ入り、セメント成分と反応してアルカリ性が低下する現象が「中性化」です。
空気中のCO₂が表面からコンクリート内部へ入ります。
セメント中の水酸化カルシウムなどと反応し、pHが下がります。
鉄筋表面を守る不動態被膜が維持されにくくなります。
鉄筋が腐食し、錆によって体積が膨張します。
膨張圧でかぶりコンクリートにひび割れや浮きが生じます。
表面が欠け落ち、鉄筋露出や断面欠損につながります。
空気中の二酸化炭素は、時間をかけてコンクリート表面から内部へ侵入します。建物の経過年数とともに、中性化する範囲が内部へ進みます。
密実でない部分やひび割れは、健全なコンクリートより二酸化炭素などが内部へ入りやすく、中性化や鉄筋腐食を進める経路になることがあります。
コンクリート表面から鉄筋までの距離が短いと、中性化した範囲が鉄筋位置へ早く到達しやすくなります。
水セメント比、締固め、養生などの影響でコンクリートが密実でない場合、二酸化炭素の侵入を抑える性能が低下することがあります。
この壁では、打設時に生じたと考えられるジャンカと、中性化による鉄筋腐食・爆裂が確認されました。そこで、表面だけを埋めず、脆弱部の手斫り、鉄筋の錆除去、防錆、接着・吸水調整、断面修復までを一連で行いました。
内装ボードを貼れば損傷は見えなくなりますが、中性化、鉄筋の錆、脆弱なコンクリート、ジャンカの空隙が直るわけではありません。見えない場所へ隠す前に、補修の必要性を確認することが重要です。
ボードの裏側に隠れると、錆汁、ひび割れ、浮き、剥離範囲の変化を日常的に確認できません。異常が表面化するまで発見が遅れる可能性があります。
中性化が鉄筋位置まで達し、水分と酸素が供給される状態では、鉄筋の錆が進む可能性があります。錆の膨張圧で周囲のひび割れ、浮き、爆裂、断面欠損が広がることがあります。
ジャンカや浮いたコンクリートを処理せずに閉じると、不安定な部分が内装下地の背後に残ります。後から欠片が剥がれても、ボードを外さなければ状態を確認できません。
内装完成後に補修する場合、ボードや仕上げの撤去、室内養生、コンクリート補修、ボード復旧、仕上げ直しが必要になる可能性があります。工事範囲・日数・費用の負担が大きくなりやすくなります。
同じ壁でも、骨材が露出したジャンカと、鉄筋腐食によって生じた爆裂では、確認する範囲と処理が異なります。



脆弱部を除去し、鉄筋を処理してから補修材で断面を復元します。各工程を実際の施工写真で紹介します。


ジャンカや爆裂箇所の状態を確認しながら、弱くなったコンクリートをハンマーで除去しました。表面を覆うだけではなく、健全部まで補修できる状態をつくります。

脆弱な部分を除去し、露出した鉄筋と周囲のコンクリートの状態を確認しました。次工程の防錆処理と断面修復につなげます。


露出した鉄筋の錆をワイヤーブラシやサンダーなどで除去し、マイルドサビガードを塗布しました。錆を残したまま補修材で覆わず、鉄筋処理を行ってから復旧します。

既存コンクリートと断面修復材の付着を高めるボンドとしての役割に加え、下地の吸水状態を調整する目的でハイフレックスを塗布しました。


欠損した部分へ断面修復材を塗り付け、必要な厚みと形状を復元しました。壁際や狭い範囲も、下地に密着させながら施工しています。
材料名だけを並べず、各工程で何のために使用したかを明確にします。

錆を除去した鉄筋へ塗布した錆止め材です。

付着を高めるボンドとして、また下地の吸水調整を目的に塗布しました。

欠損したコンクリート断面の復元に使用した補修材です。
色合わせは行わず、内装下地の内部に劣化部を残さないことを優先しました。補修後は、この上から内装ボードが施工されます。
中性化が鉄筋位置まで進み、水分と酸素によって鉄筋が腐食すると、錆の膨張圧で周囲のコンクリートにひび割れや浮きが生じます。これが進行すると爆裂・剥落や鉄筋露出につながります。
錆汁、ひび割れ、浮き、爆裂は異常を疑うサインですが、中性化の深さを正確に把握するには試験が必要です。必要な調査範囲は建物と損傷状況により判断します。
見えなくなるかどうかと、コンクリートや鉄筋の状態は別の問題です。脆弱部や鉄筋腐食が確認された場合は、仕上げ前に補修範囲を確認します。
損傷が直るわけではなく、状態を確認しにくくなります。後から補修する場合は、内装の撤去と復旧が必要になる可能性があるため、閉じる前の確認が重要です。
弱いコンクリートや錆を残したまま表面だけを覆うと、内部の劣化要因が残ります。損傷状態に合わせて斫り・鉄筋処理・下地処理を行います。
壁全体、損傷部の接写、場所が分かる引きの写真、可能であれば寸法が分かる写真をお送りください。
見た目や内部の状態により処理範囲が異なります。鉄筋腐食の有無、空隙の深さ、周囲の浮きなどを確認して施工内容を決めます。
技術情報の参照先: 日本コンクリート工学会「中性化」、国土交通省資料「コンクリートの中性化」
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